東大教授の福島智(さとし)さんは、ハードボイルド小説のファンを公言している。福島さんは、9歳で失明、18歳で聴力を失った。見えなくて聞こえない過酷な状況で生きるということは、毎日戦場にいるような感じだという。
▼それゆえ、「命ギリギリのところで生きる(ハードボイルド小説の)登場人物」に「親近感が湧くし、エネルギーをもらえるんです」。数年前、月刊誌『致知』に掲載された作家、北方謙三さんとの対談で、語っていた。
▼昨今の大学生の多くは、そんなエネルギーを必要としていないらしい。全国大学生協連合会の調査によると、学生の「本離れ」はますます進んでいる。昨年はとうとう、1日の読書時間ゼロと答えた大学生が、初めて5割を超えた。
▼情報収集は、スマートフォンで用が足りる。アルバイトや就活で忙しい。理由はいろいろあるだろう。ただ別の調査では、高校生の「不読率」も5割に近い。大学入学前に読書の習慣が身に付いていないと、ずっと本と縁のない生活が続いていくわけだ。
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