「世界中を図書館に」。そんなコンセプトで、各地で本を読んでは手放し、顔の見えない読書好きと心で交流する活動があるという。
就職・ビジネスから漫画、洋書まで、さまざまなジャンルの本が世界を旅する
うっすらと日焼けした文庫本を取り出した。「春にして君を離れ」。英国の推理作家、アガサ・クリスティー。「これ、すごく好きでね」と、岡田くみこさん(46)が背表紙を開いた。
ブッククロッシングに登録された本には、このようなラベルが張ってある
2012年4月2日、東京でこんな感想が記されていた。「読む側の人生経験によって受ける印象がちがうだろう一冊」。3日後の5日、今度は大阪で別の読者が「こわ~い本。妻にとって? 夫にとって? 家族にとって?」と書いた。そして「ミステリーの女王」の名著はいま、岡田さんが広島市西区で営む雑貨店にたどり着いた。「たまたま友人が勤める会社のロビーに置いてあったんです。うれしくて持ってきました」
街を歩いて、このポスターがあったら立ち寄ってみよう
ブッククロッシングは01年3月、米国で始まった。読み終えた本をインターネットで登録し、固有の番号「BCID」をつけ、感想とともに世界中を旅させる。ネットで追跡が可能だ。
ボランティアで設けられた「ゾーン」と呼ばれる場所のほか、駅やカフェ、公園といった誰かが拾ってくれそうなポイントで、自由に本を置いたり、持ち帰って読んだりして、また手放す。すべて無料。原爆にさらされた建物を記録した「ヒロシマをさがそう」は、16年8月に広島市の書店から米ニューヨークのブルックリンへ渡った。「良い本だったよ」。そうネットに書き込まれた後、また旅に出ている。..>> 続きを読む..